戦えコミュ症オンナ
「いくぜ!jsc!」
私はこのセリフを、これまでメールやチャットで数回しか言ったことがないのだけれど、毎回恥ずかしく、自分で自分に照れ笑いをしてしまう。
私には似合わないと思うし、自分のコトバではない感じがしてフワフワする。いや、それはそうだ。まさに自分のコトバではないのだから。でも昔の私なら絶対に言えなかったコトバなんです。
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3年くらい前。
私はスマホゲームで、短時間でできるライトなゲームばかりをやっていました。所謂時間つぶしです。だってスマホでゲームで遊ぶってそういうことでしょう?
好んでよくやっていたのは「箱庭ゲーム」や「パズルゲーム」。RPGも好きだけどスマホのはガチャばっかりで、あまり好きじゃありません。
ちょうどその頃。
私はリリースしたばかりの「ローモバ」と出会います。戦争をモチーフにした箱庭ゲームかな?と思ってダウンロードしました。
洋ゲー特有の濃いキャラクターはあまり好みではなかったけれど、グラフィックは綺麗だし、UIも使いやすいなぁと感じたことを覚えています。
そのときの私は、ちょうど「パズルゲーム」にハマっていた時期で、パズルゲームのスタミナ待ちの間だけ、ローモバにインして遊んでいました。
戦争のコンテンツは放ったらかしで、箱庭感覚でずーっと内政。研究が楽しくて、時短やジェムをどんどん研究に使っていましたね。
人付き合いが苦手なのでギルドは入っていませんでしたが、ギルドに入らないと不都合が多かったので、仕方なく1人ギルドを作っていました。
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パズルゲームに飽きて、ローモバをやる時間が長くなってきた頃。私は「ヘルプ」の存在に気づきます。
「ギルドメンバーにヘルプして貰えば研究時間が短くなる…」
ギルドに入って人と話すのは苦手だれけど、ヘルプは欲しい。数日悩んで、私はやっぱり人の多いギルドに入ることにしました。効率の良い方法がわかっているのに、それをやらないなんて超ストレス。効率厨なので。笑。
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いくつかの日本ギルドに申請を出すと、すぐに一つのギルドから許可されて入ることができました。
「jsc…。覚えにくい名前だなぁ」
jscは、メンバー30〜40人くらいの日本ギルドでした。それでも私は研究のヘルプがもらえるのが嬉しくてウキウキしながらプレイしていました。無言でしたが。笑。
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ロードモバイルを深くやり始めると「説明ないなぁ、このゲームw」と思うことがたくさん出てきます。
どのコンテンツにしてもチュートリアルや説明が少なく、当時はネット上にも攻略情報がほとんどありませんでした。そのため、多くのプレイヤーが手探りでゲームをやっていたと思います。
私も過去のゲーム経験値をフル活用しながら、試行錯誤で育成をしていました。
まぁなんだかよくわかないことが多いゲームだけれど、研究でやれることが増えていくのは楽しく、私は研究を先行させ、早々とt3を解放していたおかげもあって、めきめきパワーが上がっていきました。
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周りに比べてパワーが高かった私は、チャットで質問されることが徐々に増えていきます。何しろネットに情報がないので、ゲーム内で見聞きすることがとても大事だったのです。
私は一人で黙々とやるゲームをプレイするのが好きで、人と話すことは苦手でしたが、質問に答えるだけならコミュ力も必要ないので楽でした。そうやってjscで過ごしている間に、ついつい自分からチャットをする機会も増えていくことになります。
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そんな平和で楽しいローモバライフのある日。
ギルドメンバーから「攻撃されているから助けて!」とチャットに発言がありました。座標を見ると、兵もなくなった空の城を、何回も攻撃されています。
今となっては無意味な攻撃で、誰もそんなことはしませんが、当時はそういった攻撃が横行していました。
兵を死亡させるでも、ロードを捕らえるでもなく、城を燃やすこと自体が目的の一つとして成立しており、勝ち負けにおいての大きなポイントでもあったんです。
今なら「バリアを張るか、ランダムで飛んで」とアドバイスできますが、そのときはそんなアドバイスを送る知識も余裕もありません。
「助けるってどうやって?」
私はパニックになりながら、何をしていいかもわからないまま、とりあえず現場の座標に飛びました。
「反撃だー!」と盛り上がるチャットに後押しされ、私はもたもたしながら敵を攻撃しました。黒煙があがり、敵は燃えません。もう一度攻撃。敵は燃えません。さらにもう一度攻撃。すると次は燃えました。燃えたことでようやく敵はどこかへ飛んで去っていきました。
チャットは大盛り上がりです。
でも、ほっとして気づくと、私の手はずっとぶるぶる震えていていました。脇からわき腹に汗が流れ落ち、心臓の音が聞こえそうなほど鳴っています。
実は私、そのとき初めてまともに敵を攻撃したんです。才能や戦争装備、ロードを入れる、だなんて知識もなく、ただただ城内にいる兵隊でめちゃめちゃに攻撃をしただけでした。
このゲーム怖い!
ゲームを介してとはいえ、生身の人間と直に感情のぶつけ合ったことで、私は得体の知れない何かに心を掴まれ、敵を攻撃することがとても恐ろしくなりました。
私は箱庭ゲームのように内政をコツコツやって、育成を楽しみたいだけだったんです。他人を助けてヒーローになりたいわけでも、敵を燃やすのが好きなわけでもありません。
私はゲーム好きで、アニメ好きで、酒好きで、効率厨で、休みの日でも外にほとんど出ない、ただのコミュ症オンナなんです。私にとって敵を攻撃することは、恐ろしい体験でしかありませんでした。
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「助けてくれてありがとう!!」
そんな闇堕ち寸前の私を救ってくれたのはギルドメンバーのコトバでした。
メンバーがいなければ、私はロードモバイルをとっくにやめていたと思います。
この襲撃事件で、一つはっきりとわかったことがありました。私は戦争ゲームはあんまり好きじゃない。だけどメンバーのためになら戦える、ゲームを続けられる。
私はいつもいつもメンバーに助けられ、活かされているんです。
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ロードモバイルを始めて、今年で3年が経ちました。
私は今でもロードモバイルをやっています。
3年たった私はギルドマスターになっていました。覚えにくい名前の「jsc」で。
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私はギルマスになったときに「いつか自分がギルマスになるようなことがあればやってみたい」と密かに考えていたことがありました。
それは、私が昔にプレイしていたギルドゲームで、女性のギルマスがよくやっていたこと。
彼女はギルド戦などで、メンバーを鼓舞するとき、発破のかけ方がとてもカッコよく、私は憧れていました。彼女は所謂カリスマ性があるタイプで、いつも強く、優しく、頼もしい存在でした。
私はそういうタイプではない、というかまぁコミュ症ですし。そんなセリフなんて似合わないのだけれど、強く、優しく、頼もしい存在を目指したい、とは思っているんです。
というわけで・・・
「いくぜ!jsc!Let's enjoy the game♡」
ご一読いただきありがとうございました。
おわり。照。